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2010年4月 7日 (水)

日本IBM社の取引がH22年税制改正後に行われたらどうなるか?(続き)

既にIBMの話を飛び越えて、グループ法人税制の解説になっていますが、今日はこの制度のとても大事な部分について解説します。
話を最初からフォローしたい方はそれぞれのページを参照してください。

・IBMへの更正処分に関するエントリ
・譲渡損益調整資産に係るグループ法人税制

上記2番目のエントリの際、法法61の13の規定はあくまで留保項目としての税務調整であり、譲り受け法人側で2次譲渡等の事由が生じた場合には譲渡損が認容されてしまいますよ、という話をしました。では、結局グループ内外で資産の譲渡が行われた場合、連結納税との併用で課税所得の減殺が図られてしまうのか?

お上もそれほどバカじゃありません。
以下の2つの規定が改正されています。

1. 寄付金と受贈益の二重課税の排除(法法25の2、37②,81の6②)
完全支配関係のある内国法人に対する寄付金について、支出法人において全額損金不算入とするとともに、受領法人において全額益金不算入とするものです。

ここでのポイントは、完全支配関係のある法人間での寄付や低額譲渡が行われた場合、今後は両者において損も益も全く計上しなくなる、ということです。
(改正前までは、S1において損金算入限度額の枠内で損金算入(連結納税を適用している場合を除きます)され、それを超えた部分については、S2においての受贈益計上と合わせて、寄付金の損金不算入部分が2重課税になっていました)

これだけ見ると、グループ法人間での取引についてグループ一体課税の方向に大きく舵を取ったことが分かりますね。
2重課税も排除され、グループ間で資金や資産の機動的な移動が可能になったことがわかります。

でもこれだけの制度ですと、前述の日本IBM社のような取引は防げませんね。

・APH社が米IBMから日本IBM社株を1000で購入、日本IBMにこれを100で売却し
・日本IBM社での資本金等の額と利益積立金額の割合が3:7と仮定。
・日本IBMへの売却時の時価は1000であった
とした場合、APH社では税務上以下のような仕訳が立ちます。

現金 100 / 有価1000
贈与費用900 / みなし配当70
譲渡損 70 /

反対に、日本IBMでは以下の仕訳が立ちます

資本金等の額 300 / 現金 100
利益積立金額 700 / 受贈益 900 (<-贈与費用のウラ)

グループ法人税制がなければ、税務上モノの譲渡は全て「時価課税」
結果的に各事業年度課税であれば、上記贈与費用のうち損金算入限度額を超える部分の金額は損金不算入。
譲り受け側でも受贈益が同額計上されていますから、2重課税が発生しますので、こういった取引への抑止効果が期待できます。
Group
(そして、きっとこれが今回のIBM-APH社への更正処分のポイントでしょう。繰り返しますが、連結納税制度の欠損金の繰越控除に対して更正を掛けたものではないと個人的には考えています)

ところが今回の改正が入るとどうでしょう?

法法61の13により当期はAPH社で譲渡損の繰延が図られれるものの、受贈益は益金不算入、寄付金は損金不算入です。
結果的に留保項目が認容されれば、譲渡損だけがグループの損金として計上されますね。配当は従来通り、益金不算入ですから、いわゆる「2重得」の状態です。

そこで、この不具合を解消するために同時に規定されたのが以下の規定です。


2. みなし配当事由の対象となる株式譲渡に係る譲渡損益の損金・益金不算入(法法61の2②、④、⑯)

内国法人が所有株式を発行した他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係があるものに限る)のみなし配当事由により、金銭その他の資産の交付を受けた場合等には、当該株式の譲渡損益を計上しないこととする

つまり、以下の仕訳のうち、「金銭その他の資産の交付」の反対勘定に当たる部分の金額(=譲渡損70)については損金に算入されないこととなるわけです。

現金 100 / 有価1000
贈与費用900 / みなし配当70
譲渡損 70 /
⇒「みなし配当事由の株式譲渡に係る譲渡損の損金不算入等 70(加算・社外流出)」
(実際の科目・処理については、政令が出てからの要確認です)

結果的に、上記1及び2の規定の運用により、完全支配関係のあるグループ法人間で行われた①寄付や低額譲渡については益も損もないことにされ、
②みなし配当事由が生じている場合の譲渡損部分についても損金不算入とされる。つまり、900+70=970は全額が損金に計上されず、今回のAPH社のケースにおいても相殺対象となる赤字は生じなかったことになります。

ではこのようなケースではグループ法人税制のメリットは全くないのか?
そんなことはありません。

APH社のケースでは、そもそも時価譲渡を行っていなかった、ないし、「時価」の測定が正しく行われていなかったために、譲渡損だけが連結納税制度の運用上損金に算入されてしまったことによるもの。本来は受贈益の計上と行って来いで、900部分について寄付金の損金不算入が適用されていたはずです。(この場合においても、譲渡損70は損金に計上されたままです)

上記グループ法人税制が導入されるとどうなるか?
損金不算入の対象とされるのは、譲渡損70部分であって、900部分については損も益も計上されず、グループ全体の課税所得計算に一切影響しません。
この900部分に関する二重課税リスクの排除が、グループ法人税制の導入による変更部分です。

(※政令・通達がまだありませんので、実際の規定の運用を保証するものではありません。念の為)

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コメント


初めまして^^

リサです。

とても楽しかったです!

また、覗きにうかがいます~

お互い頑張りましょうね

投稿: リサ | 2010年4月 9日 (金) 11時07分

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